卒業式が挙行されました

令和4年度卒業式が挙行されました。

令和4年度 卒業式 式辞(主旨)

 306名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
 皆さんは令和2年4月に入学し、それ以来3年間、本校で多くのことを学び、高等学校の全課程を修了しました。
 明治5年創立の本校は、皆さんが在学中の昨年、創立150周年を迎えました。今年はまた次の10年に向かっての第一歩を踏み出す年となりましたが、その本校の歴史の一頁に、皆さんもしっかりと刻み込まれたわけです。先ほど表彰された人たちに限らず、ここに居並んだ一人ひとりが、きっとこの3年間で立派に成長してくれたことと確信しています。
 本校の卒業式が初めて実施されたのは、明治27年と記録されていますが、その第1回卒業式から数えて、今回は第131回目ということになります。そんな卒業式の中でも、引き続く今の時勢にあって、一昨年は保護者の皆様の卒業式会場への入場はしていただけませんでしたし、その前年には卒業生全員が一堂に集まるということもできませんでした。
 振り返ってみれば、皆さんが高校1年生になった春、学校からは生徒の姿が消え、異様な静寂に包まれ、それまでとは違った日常が始まりました。はっきりいうと「普通」ではなくなったわけです。
 本日は、皆さんが入学した時の校長先生・伊藤詔一先生にご臨席いただいています。この後ご祝辞を頂きますが、今までの「普通」が普通ではなくなる、前例のない局面に遭遇したのですから、皆さんばかりか、当初の気苦労は、察するに余りあるものがあります。
 ただ、個人的には、これを機に、もしかしたら世の中の「普通」が劇的に変わるのかなと、いい方向に期待する気持ちも少しはありました。通常、世の中の価値観はゆっくりと変化していきます。例えば「環境」に対する意識や「ジェンダーフリー」の受容など20年・30年前とは大きく変わってきていると感じます。
 一方で、精神科医の中井久夫さんが「我々は代案を考え抜くよりも、後戻りすることを選ぶ恐れがある」と言っている通り、とにかく「早くコロナ以前の普通に戻りたい」という風潮があることも否めません。しかし、皆さんの世代(今の20歳前後)の人たちが、人口の過半数を占める頃には、必ず「変化」が起こります。それは、もう20年くらい先のことかもしれませんが、現在の混迷の経験を元に世の中は変わるはずです。
 卒業特集の校報にも書きましたが、皆さんがこれから進んでいく先には必ず「仲間」がいます。様々なバックグラウンドを持つ人たちと集い、自分と違う属性の仲間を増やすことで、新しい時代を創り、新しい普通を作っていくという力が、皆さんにはあるのだと、そのことを心から信じています。
 しかし、その前に、卒業生の皆さん、今日の節目を確かなものにするために、家に帰りましたら、改めてご両親に卒業の報告をし、感謝の気持ちを伝えてください。
 最後になりましたが、本校での3年間の教育活動にお寄せいただきました、保護者の皆様のご理解とご協力に対し、心より御礼申し上げます。
 重ねて卒業生の皆さんの前途に、幸多かれと、心よりお祈り申しあげます。
 以上を持ちまして、式辞といたします。

 

令和5年3月5日 学校法人上野塾
東京高等学校長  鈴木 徹