卒業式が挙行されました

令和3年度卒業式が挙行されました。

令和3年度 卒業式 式辞(主旨)

286名の卒業生の皆さん、誠におめでとうございます。
皆さんは平成31年、つまり平成最後の4月、翌5月には令和になるという年に入学しました。
以来3年間、本校で多くのことを学び、ここに高等学校の全課程を修了しました。
明治5年創立の本校は、今年150周年を迎えることになりますが、その本校の歴史に、皆さんもしっかりと刻み込まれたわけです。式中で表彰された人たちに限らず、ここに並んだ一人ひとりが、この3年間できっと立派に成長してくれたことと確信しています。
また今回の式は、明治27年に行われた第1回の卒業式から数え、第130回の記念すべき節目です。(節目の年なので記憶に残ると思います。)
さて、このところの卒業式、昨年は保護者の皆様にはご入場いただけませんでした。一昨年に至っては卒業生全員が一堂に集まることもできませんでした。振り返ってみれば、皆さんが高校1年生の冬の、3学期からはそれまでと違った日常が始まりました。はっきりいうと「普通」ではなくなったわけです。そのような状況の中で、生活のさまざまな場面で、皆さんは「可哀想」だと言われるようになりました。修学旅行に行けないので「可哀想」、文化祭などの行事が出来ないので「可哀想」……でも、誤解を恐れずに言うと、私は皆さんが「可哀想」だとは思っていません。何故かと言うと、「現在」を裏返せば、「将来」には、大きな期待をしてよいことになるからです。
感染が拡大した当初、もしかしたら世の中の「普通」が劇的に変わるのかなと、良い方向に期待する気持ちもありました。しかし今の世間の風潮は「早く普通に戻りたい」という考えの一点張りであるような気がします。それでは、いわゆる「*パラダイム・シフト」は起きません。
*パラダイム・シフトとは「今までの常識が大きく覆って、全く新しい常識に切り替わる」、尺度の大転換。
いずれにせよ、劇的な変動が期待できそうにないのは、実に身も蓋もない話なのですが、「パラダイム・シフト」の機巧(からくり)は、結局『世代交代』だからなのです。人間の入れ替わりを待たないと世界は変わらない、この実相を昨今痛感しています。
新しく正しい理論でも、古くて誤った理論を一瞬で駆逐することはないようです。その意味で申せば劇的な「シフト」など決して起こらない。長い時間をかけて、新しい「普通」にシフトしていく。それが結局のところは「通例」なのです。
そういう意味で皆さんには期待しています。皆さんの世代(今の20歳前後)の人たちが、人口の過半数を占める頃には、必ず「変化」が起こります。それは、まだまだ20年くらい先かもしれませんが、現在の混迷の経験を元に世の中は変わるはずです。我々の世代、いや、少なくとも私には想像できない未来でありますが、皆さんには、新しい時代を創っていく力があるのだと、私は心から信じています。

さて、その前に、卒業生の皆さん、今日の節目を確かにするために、帰宅しましたら、改めてご両親に卒業の報告をし、感謝の気持ちを伝えてください。最後になりますが、保護者の皆様には、この3年間、本校の教育活動にご協力とご理解をいただき、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。

卒業生の皆さんの前途に、幸多かれと祈ります。
以上を持ちまして、式辞といたします。

令和4年3月5日

学校法人上野塾
東京高等学校長  鈴木 徹